2018シーズンのトライアウトに向けてタイ短期留学

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トライアウトに向けて

タイの移籍期間は基本的にシーズン終了後から開始までの12月〜1月と、シーズンの折り返し時期である6月〜7月の年に2度あります。基本的には選手が移籍したり、チームに登録するといったような事はこの期間内でなければ出来ません。そのためトライアウトもその期間に合わせ、1年に2度行われます。厳密に言えばこの移籍期間が始まる少し前から準備段階も含めてトライアウト期間は始まっていると言えます。

トライアウトに来た選手達は限られた時間の中でチームの練習に参加したり、トライアウトに参加します。しかし、気候、生活、言語、文化の違いなど、挙げれば切りがありませんが選手達がサッカー以前に乗り越えなければいけない壁は想像以上にあると言えるでしょう。

留学

今回留学生としてタイにやってきた三浦建太郎君。彼は関西の大学に通う大学3年生です。卒業は1年後、その1年後のタイへの挑戦を見据えて、今回は学校の長期休みを利用し1ヶ月間の留学にやって来ました。

彼が練習に参加したのは4部リーグに当たるT4の2チーム。まずはバンコクからほど近いノンタブリー県に本拠地を置くNonthaburi FCの練習に参加しました。

Nonthaburi FCはT4に所属するチームですが、昨シーズンに新設された素晴らしいスタジアムを所有していることでも知られています。来期のT3昇格を見据え、実績のある選手を集め、力を入れているチームです。

 

しかしNonthaburi FCの練習環境はお世辞にも良いと言えるようなものではありません。荒れたグラウンド、しっかりとしたピッチで練習ができるのは1週間に2〜3度ほど。練習のオーガナイズも日本に比べれば整っているとは言えるものではありません。

しかし、こういった事もタイに来れば ”普通” の範囲内なのかもしれません。”サバイサバーイ” ”マイペンライ”。タイ人の性格を表す代表的な言葉ですが、意味は『楽にいこう、大丈夫、なんとかなる。』と言った意味です。こういった国民性はサッカーの中でも顕著に現れます。

何事もきっちりとこなす習慣を持つ日本人からするとなかなか理解し難い事かもしれませんが、これもタイとの文化の違い、タイで生活する上で必ず感じる事の一つでしょう。

プロフェッショナルであるはずのプロのサッカークラブの現場でもこういった事は普通にありえることです。こういった文化の違いにどう自分の中で対応するのか。海外で生活する上でサッカー以前にとても大事になる部分です。

 

 

留学期間後半の2週間はバンコクに本拠地を置くNorth Bangkok FC の練習に参加しました。North Bangkok FCは現在リーグ戦で5位につけ好調を維持するチームです。クラブは大学が母体になっていて若い選手が多く所属しています。

シーズン途中という事もあり、タイでは紅白戦や練習試合はあまりしないというチームが多い中、North Bangkok FCでの最後の日には Ayuttaya Unitedとの練習試合に参加することが出来ました。Ayuttaya Unitedはひとつ上のカテゴリーであるT3に所属するチームです。実績のある外人選手も多数所属していてT2への昇格を目指す強豪チームです。

短い出場時間ではありましたが、実践の中でタイのサッカーを肌で感じることが出来たと思います。

 

 

タイリーグ観戦

 

また滞在中には2試合の試合観戦にも行って来ました。タイトップリーグであるT1のPort FC 対 Navy FC。そしてT2のBangkok FC 対 Trat FC の試合を観戦しました。Port FC は実力、人気ともにタイの中でもトップクラスのチームです。タイ代表選手や各国の元代表選手、元アビスパ福岡や湘南ベルマーレでも活躍した永里選手も所属しています。

ちょうど三浦くんが来タイした2月28日。バンコクではACL(アジアチャンピオンズリーグ)、タイ王者のMuangthon United 対 鹿島アントラーズの試合が行われていました。試合はまさかの2−1でMuangthon Unitedの勝利。タイにとっては歴史的な勝利になりました。

代表レベルでの差はまだまだあるのかもしれませんが、クラブレベルではもう日本にとってタイのクラブは侮れる相手では決してありません。

観戦に行った2試合はそれを裏付けるようなレベルの高い試合に三浦くんも驚いていたようでした。外国人選手の迫力、そしてローカル選手の技術の高さ、試合の盛り上がり。Jリーグよりも見ていて楽しかったかもしれない、と観戦後に語ってくれました。

 

留学を終えて

 

留学を終えた三浦君に率直な感想を聞いてみました。

『やっぱり言葉ができないとコミュニケーションがうまくとれない。そこの重要性を一番に感じました。そしてタイのレベルの高さは想像以上でした。語学、フィジカル、全ての面で今回感じた事を1年後のチャレンジに向けてしっかりと準備してきたいです。』

 

 

練習参加をしたNorth Bangkok FCのコーチ

『彼は技術がある素晴らしい選手ですね。しかし、タイのチームは身体の大きく強い外国人選手を求める傾向があります。しっかりフィジカル面も鍛えることも必要です。そして英語を勉強することも大事なこと。彼の性格なら言葉ができればもっとしっかりコミュニケーションが取れて、タイのチームにもすぐ馴染む事ができると思います。私達のチームに練習参加にきてくれて私たちも本当に嬉しく思っています。ありがとう、幸運を祈っています。』

 

言葉も分からない、文化も違う、何も分からない。

 

そんな環境の中で得たここでの経験は彼にとって大きな糧となったことでしょう。見たり聞いたりしただけの情報からでは絶対に分からない本当の経験。彼がこの1ヶ月の留学で得た経験というのはお金には変えられない物であり、彼の今後のサッカー人生にとっても大きな経験になったはずです。また彼がタイに来て、そして今度はプロのサッカー選手としてプレーする姿を見るのが楽しみです。

 

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